ぱっとやごうのジャズ千夜一夜物語

第4夜 おさまるべき場所 その1

カッターシャツ3枚とスラックス一本を引き取りにクリーニング屋さんに行くと「あ、ぱっとさん。いらっしゃい」と、いつになくおばちゃんが愛想良く声を掛けてくれる。

「あれ、おばちゃんにぱっとさんなんて呼ばれるのは初めてだな。なんでそんな呼び方、知ってるんですか?」

「あー、申請書に書いてあったよ」

「えっ、申請書? 何ですかそれは?」

おばちゃんは事務机をガサゴソと捜し始める。 店の外を大型のトラックが
『PUAAAN!』とでかい音でクラクションを鳴らしながら走りすぎるのが聞こえる。

「これこれ、これだよ」

おばちゃんの見せてくれたノートを手にとって見てみると、ただの顧客リストだ。 でも確かに僕の字で『PAT M』と書いてある。 何かの時にしょっちゅう来る店でもあるまいと、軽い気持ちで冗談半分で書いたのだろうと思い、別段これと言った感じも持たずに言った。

「ふーん、えーと、今日はこれお願いします。 カッターシャツ3枚とスラックスね。 これ引換券」

「あ、これ期限切れです」

「は?」

「期限切れなんです」

先程とは打って変わって冷たい声だ。

「期限切れって ‥ 何ですかそれ?」

「引き取り期限が過ぎたのでオークションに出されたんだよ」

「何それ? ちょっと待ってよおばちゃん、冗談だよね? そんなのあり?」

「有り有り、大有りだよ。 どうしても、と言うならオークションで買い戻すんだね」

「何言ってんの。僕は貰って帰るからね! どこでやってるの、そのインチキオークションは?」

「とーなーりー」

クソ頭に来るふざけた言い方だ。 わけがわからない。 それでも取り敢えずその隣にあるというオークション会場とやらへ行ってみる。


─ うそだろー!何だこれは!? ─


続く

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