ぱっとやごうのジャズ千夜一夜物語

第15夜 GOOD BAITの落書き帳 その8 悪いが憤懣やるかたないのでこの場を借りる

あのね、僕は確かに君たちお似合いのカップルに共通の友達だ。 だけど眼も眩むほど素敵な君に一つ言っておきたい事がある。 君が僕に持ち込んでいる相談事とその解釈や処理の仕方は、以下に書いている事とイコールだと言う事。 一つ考えてみて欲しい。

例えば、の話だ、おこるんじゃないぜ。

『事例』

君たちお似合いのカップルはおならが臭いか臭くないかについてもめている。 そして、そう言う時いつもそうするように君が真夜中に電話してくる。 そしていきなり切り出すのだ。

「ねえ、ぱっとさん、おならは臭いと思う?」

僕はすでにそこでやりきれない。 だけど君が簡単には引き下がらない事を知っているので我慢して答える。

「うんちに比べたら臭くないんじゃないかな」

そしてそそくさと電話を切る。 とてもやるせない気分だ。 あまりに不愉快なので、ターンテーブルに乗ったままのエラの『AT THE OPERA HOUSE』をもう一度小さな音で流して気分を変える。

翌日、驚いた事に君の彼氏が僕に言うんだ。

「おまえ、おならは臭くないと言ったのか?俺の前ではおならが臭いと言ったくせに」

一寸待ってくれ。僕はそうは言っていないだろ? 僕が両方にいい顔をして適当な事を言ったのか?  悪いが君の彼と僕との付き合いは、君と僕との付き合いより長くて深い、 この際だからはっきりさせておく。 亀の甲羅とすっぽんの甲羅のどちらが硬いかについて君たち二人がもめたことによって、僕が君の彼氏から信頼を失うのはまっぴらごめんだ。 お互いの信頼を高めるのは誠に結構だが、その為には君の彼氏が『君たち二人だけのもの』と思っている秘密や情報を僕になんか流さない事だ。 僕と君の彼氏は、非常に仲の良い友達だ。 それはどこまで踏み込んで良いかをお互い暗黙の内に了解しているからだ。

ふぅ‥

僕の言いたい事はそう言うことだ。 金輪際、未来永劫、君たち二人のもめごと、悩み事は君たちで処理してくれたまえ。 それが出来るなら、お詫びのハイネケンを奢られることはやぶさかではない。

AT THE OPERA HOUSE / ELLA FITZGERALD

1957年 VERVE

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