ぱっとやごうのジャズ千夜一夜物語

第31夜 かげふみ(12)

お恥ずかしい過程を経て、僕はようやく彼女の上半身を被っている衣服を一枚ずつ取り去る事に成功した。 体を密着しての行為だったので、その間は彼女の体をながめる余裕などまるで無かった。 そしてようやくそれら一連の作業(?)が終わった後で、僕はどうしてもその全体像を見てみたい衝動にかられ、一旦体を離して「電気消すね」と言いつつ実は立ち上がって、彼女の裸の上半身に視線を落としたのだった。 視線を落とす前に、「そうか、この時間を利用してあらかた俺も脱いでしまえば良いんだ」と気が付いたのだが、いざ彼女の両手で胸を覆われた上半身を見てかなりのショックを受けた。

─ あかん、まだ子供やんか‥ ─

ガキの僕がそんな風に思ってしまった。 グラビアなどで見慣れて当たり前のように思っていた豊満な肉体はそこには無く、まだ無邪気な女の子が恥ずかしげに胸を隠しているといった感じのその姿に、何もかもはじめての僕は痛く動揺してしまった。 しかし、動揺しながらも ─ 今日、今日『しるし』をつけてしまわんと‥あさって智恵の気が変わったら大変やし‥ ─ と、僕の邪心はまったく弱まったりしていなかった。

ふとみるとガラスのテーブルの上に店の落書き帳と ─ 何であんなところにまで有ったのだろう? ─ 注意書きの印刷物と灰皿が有り、その灰皿の中に『避妊用具』が入っているのが眼に入った。 電気を薄暗くして早くもシャツとトランクスだけになった僕は、またもや突然思ったのである。

─ あれ、俺は一体いつ付けたら良えんやろか? ─

【次週に続く】

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